「あの『ピヨちゃん』がこんなんなっててすみませんっ」

「……」

「人として終わってるってわかってるんですっ」

「……はあ、あのさ、」

「っ…不倫なんてする下卑た女になりさが__」

__っててごめんなさい。

そう言うつもりであった言葉は思わぬ熱と力で口内の奥へと押し戻された気がした。

ああ、それと……目力か。

すっぽりと口元を覆いに来た手の大きい事。

強引に引き戻された理性がようやくそんな感想を抱いた刹那を見計らったように響く、

「それ以上、ピヨちゃんを貶すなら怒っちゃうよ?先生も」

牽制の響きと眼光と。

相変わらず無表情の癖になんて鋭い眼差しを向けているのか。

燻ぶっていた激情の余熱なんて一瞬で冷やされ消えてしまった程に。

怒っている。

そんな感情を実に静かに重くぶつけてきたような姿には呼吸も忘れて萎縮してしまったのに。

次の瞬間には、

「っ__!!」

先生の長身な体に柔らかい所作ですっぽり抱き締められていたのだ。

えっと……えっ?

なにコレ?

なにコレ、なにコレ、なにコレ??

「本当……相変わらず感情操作の下手くそなお子さまか」

「っ……あ……や……すみま…」

「変わってなくて……安心するよ」

「っ__!?」

な、何で?

あれ?

どうしてこんな先生に抱きしめられるような流れになったんだっけ?

何でこんな耳元で直に言葉を吹き込まれるような…。

柔らかく髪に指を通してくる仕草も……

一体、どういうつもりの全てなんですか?