一体何を言い出したのか。
冗談を言うタイプの人ではなかったと思うのに記憶違いだったのだろうか?
いや、冗談にしては強すぎる拘束の力と表情と。
それでも全く意味が分からないと疑問を強めて見つめ返せば、
「………薄々分かっちゃいたけど。……昨夜の事全くと言っていい程覚えてないみたいだね」
「申し訳ありませんが……本当に全く」
「俺に縋りついて『会いたかった』って言ってきた事は?」
「っ……全く」
「疲れたから『撫でて』って泣きついてきた事は?」
「っっ……すみません」
「俺に『抱いて』って跨ってきた事は?」
「はっ!?嘘で…__」
「うん、嘘」
「先生っ!!?」
「撫でてってとこまでは事実だけど最後のはでまかせ」
「ちょっ…はぁぁぁ、本当、勘弁してく…__」
「俺のささやかな願望と妄想なだけだから」
「っ_____」
何だろうか。
もろもろの暴露された事実も充分に殺傷能力の高い爆弾であったと思うのに。
最後の最後。
予想外にも自分を殺しに来たのは事実でない先生の虚言の方だったと思う。
だって、今なんて言ったこの人。
さらりと何食わぬ感じにとんでもない爆弾を押し付けてくれたと思う。
ささやかな【願望】に【妄想】って。
つまりは私に『抱いて』と跨られる願望を抱き、あまつ妄想までしたって意味になるわけだ。