今もまたそんな再確認の瞬間に呆けていたけれど、再び声かけより早く動かされた自分の身体。
えっ?と我に返った時には手首を掴まれ、彼の背中を見つめながらこのフロアから廊下へと身を出す最中であった。
「ちょっ、九条く…」
「あんな煩いとこで確認出来ないでしょう」
私が問うより早く淡々と返された声音に納得は出来ても実際歩み捉える景色には納得が追い付かない。
仕事の確認や打ち合わせであるなら今程通り過ぎたミーティングルームや自販機前の休憩スペースでいい筈なのに。
どこへ向かうというのか。
そんな疑問とほぼ同時に、答えを与えられるように薄暗い小部屋に連れ込まれて、視覚に捉える棚に並ぶファイルの山から資料室だと場所は特定された。
そんな刹那、
「触らせてください」
カチャリと背後の扉から響いた施錠音と同時。
耳に直に吹き込まれた低音の要求とここまで近づかねば分からぬ彼の髪から香る自分のものと同じシャンプーの匂い。
「九条君、一応ここ職ば…」
「じゃあ、俺の仕事の向上の為に見せて、…触らせてください」
『嫌』なんて返答を返すより早くだ。
拒否権など端から無いと言わんばかりに脇腹を撫でるように這う指先に服を捲り上げられて素肌に空気がヒヤリと触れた。