チラリと視線を走らせればその徒党をそそのかすが如く、今程の事をわざとらしく泣きついたらしいイズミが女子スタッフを囲って赤い舌を覗かせる。

低レベルな仕返しに走って。と、遺憾するでもなく息を吐いた私とは違い、

「うっせぇな。カマとちちくりあってる暇あったら少しは使い物になれよ体型ブス。寄せて無理矢理上げてるの丸わかりな不自然な谷間チラつかせてるんじゃねぇ。不愉快だ」

淡々と低く冷静に発せられた悪態には、『うわぁ…さすがにこれはどうなんだ?』と私もこの瞬間の凍り付いた空気に息を殺して気配を消そうと躍起になってしまった。

言われた当人らしき女性は一瞬は思考が追い付かなかったらしくも、すぐに憤怒と羞恥で顔を染め上げ般若の如くな形相を見せる。

そうして、こうなった女性は決まって、

『最っ低――――――!!』

と、叫ぶのだ。

この、〝九条 爽(くじょう そう)〟に。

残念な程…感じが悪く嫌われ者。

それが私の……〝恋人〟なのだ。

このフロアの女子全員の敵。

そんな勢いで一気に炎上するフロアは四方から非難された彼女を援護する罵声が飛んで、普通の男性であるならその勢いに怯み『すみません』と平謝りしてしまいそうだと思う。