拗ねると面倒だからな。

後でイズミの好きなクッキーでも焼いてご機嫌を取っておこうなんて、意識がすっかりそちらに向いていたのが悪かった?

ああ、確かにイズミに賛同。

行動する前に言葉にして欲しいと思ったのは強引な力で顎を掴まれ意識を引き戻された瞬間に。

そうして対峙する姿は決して表面化させずとも不機嫌な姿。

そしてもう一つイズミに賛同だ。

相も変わらず、『残念』だ。

この持ち得た良さを殺すような自分に無頓着すぎる出で立ちは。

そう思うのは…私がこの人の質の良さを知っているからだろうけれど。

残念だと思う。

この目元を覆う程鬱陶しい前髪を退ければ目を見張るほどの端整な顔があるというのに。

愛想を見せて少しでも微笑めばここにいるフロアの女性なんてあっさりと目の色を変えるのでは?と思うのに。

人気者になれる要素に満ち満ちている素材だと思うのに。

実際は私と同じく『残念』と称される生き物であるのだこの彼も。

そう、『残念』な程…


『ええ~、酷~い、イズミさんは美意識高いだけですもんねぇ、』

『口より先に手出すとか最低ですよねぇ。ちょっと仕事出来るからって、』


遠巻きにこれ見よがしな詰りが響くのは珍しい事ではない。

女の園に近い職場は女子特有の徒党が健在。