「なーにが、『身体だけ』よ。さも毎夜毎夜濃密にがっつんがっつん抱かれてるような言い回しすんじゃないわよ万年処女が」

「処女は否定しないけれど『万年』は生きてないわよ。齢27のキャリアウーマンなだけ」

「あんたね、堂々と恥ずかしげもなく淡々と処女宣言してるけど27なのよ?何いつまでも後生大事に仕舞い込んでるのよ」

「いや、別に後生大事に仕舞い込んでるつもりは一切ないけどね」

一体どんな会話をしているのか。

恥じらいなんてどこへやら、人目も憚らず声のトーンを落とすでもない会話は通り過ぎ様の無関係な人間の耳をも掠めたであろう。

それを証拠に今もぎょっとした眼差しで振り返り去っていく社員を無感情に見送る。

社員。

そう、ここは夜も更けた大人の雰囲気漂うバーでお酒片手にと言う場面ではない。

思いっきり素面の真昼間、しかも勤務中の社内の一角であるのだ。

割と名の知れた大手のブランド下着メーカー。

宣伝・広告さえも自社でとどこまでも自社製品にストイックに拘った会社の広告部のクリエイターをしている自分。

今だって仕事の合間、確認書類を持って華やかなデザイン縫製部へと来たタイミングに、唯一と言っていい友人に捕まり挨拶代わりな近況確認をされたのだ。

それに素直に答えればさっきの様な呆れた声音の切り返し。