甘いと同時に苦く、
愛情を込めて弾かれるほど虚しさを覚える。
いつからだった?
始まりにこんな虚しさは付属しなかった。
始まりは………誰でも良かった。
ただ、タイミングよく、おあつらえ向きに彼が当てはまった。
それだけ。
そんな一週間前の始まり。
「好きです。つきあってください」
はっきりと響いた声音に今時そんな大胆かつストレートな告白を口にしたのは誰だ?と完全に他人事として振り返る。
そうして捉えたのは部署が違えどその存在を知らぬものは社内にはいないとまで謳われる男。
確か私よりも2つほど年下であったと記憶する。
今日も変わらずウザったらしい前髪を横に流すでもなく、どう見ても視界を遮るように目元を覆う。
はっきりとクリアな口元は笑うでも緊張に歪むでもなくただ綺麗に真横に結ばれている。
悪名高いというのは言い過ぎかもしれない、それでもこの男が告白とは世も末だと、告白された気の毒な女子は誰だ?なんて改めて自分の首を前に戻すと…誰も居ねぇ。
自分の視界に映るのは殆どの人間が帰社した後の自分の部署のフロア。
そうだ、ここも私が最後で明かりを落とさねばなんて考えていた最中であったのだ。
ああ、つまりは……
「好きです、ミモリさん」
やっぱり私に向けてか…。

