『体目当てです』
そう告げた彼は毎夜私の素肌に触れる。
艶やかな黒髪は間近で見ると柔らかそうな質感で揺れる。
普段の距離では鬱陶しく映る長めの前髪もこの瞬間は秘め事を露わにする。
私にだけ許され明かされる秘め事はあまりにも美麗で意識を惹いて、そんな合間に男らしくも長い指先が私の肌の感触を記憶する様に這ってくるのだ。
この時間が酷く愛おしいのに、虚しく寂しいと感じるのは時間の問題であった。
「ミモリさん」
何とも思わなかった呼び掛けが価値ある響きに変化して、それでもその価値の恩恵は自分が求める物と形が違う。
「好きです」
その一言に薄っぺらさは微塵も感じない。
むしろ感情的に恍惚さも孕み感極まって零した様な節が無表情の内にも垣間見える。
何より…自分を捉えにくる彼の眼がこの瞬間に一番の情を見せてくる。
『好きだ』と、
黒と水色、異なる色味の双眸で訴え、さらには貪欲に求めてくるのに…。
〝身体だけ〟ね。
彼が愛し求めるのは私の身体だけなのだ。