広大な敷地を誇る私の通っている高校は、隣に中等部や小学部、さらに少し離れた場所には幼稚園部まである。

各々、校門や建物は違うものの、毎朝駅前あたりはたくさんの学生でにぎわう。
学力は中程度でも、エスカレーター式のこの学園に通う生徒はとても多いそうだ。

私は大学受験をしたくなくて、この学校を志願した。
受験勉強から解放されただけじゃなく、通学時間が短いことも助かっている。

今日から一斉に冬服になり、ねずみ色のセーラー服と紺の詰襟男子が門に吸いこまれていく。
「もう十月か」と季節を感じていると、向こうから和宏が歩いて来るのが見えた。