君は真昼に笑ってた

その子の名前は蒼井 弥生(あおい やよい)。
美しい黒い髪の毛が風に吹かれてキラキラ輝く。
片手には文庫本。毎日本の厚さが変わっている。
対して私はただの女子高校生。
に、なる前の未熟者の女子中学生。
平凡で友達もそれなりにいる。ただ、ちょっと体が弱い。
だから私は今この決められた時間を刻むのを虚しく思いながら過ごしていた。
弥生ちゃんと出会ったのはこの病院。
数週間前気分転換をするために私は中庭に足を運んだ。
中庭は手入れがされている花々が私を迎えてくれた。
意外と中庭に訪れる人は少なく、私が弥生ちゃんと出会った日も私と弥生ちゃん以外いなかった。
中庭には秘密基地のようなあまり人目が付かない場所にベンチがあった。
私が弥生ちゃんと出会った日、弥生ちゃんはそのベンチに姿勢よく座り、ある手紙を読みながら涙を流していた。
そして私の存在に気づいた弥生ちゃんは
「もしかして、あなたは…卯月…さん?」
と呟いた。
そして私と弥生ちゃんは出会って仲良くなった。
実はどうやって仲良くなったのか記憶があいまいになっている。
でも、初対面なのに名前を言われたことだけは覚えている。
なぜあの時私の名前を知っていたのか、偶然なのかよくわからないけれども、聞きたくても聞けない微妙な雰囲気だった。
弥生ちゃんと私の間にはちょっとした溝がある。
仲悪いとかそういうのではなく、踏み込めない領域みたいなもの。
いつかは本心をお互いに明かせるような関係になりたい。
私は全てが曖昧な人間だ。
実はどうしてここの病院に入院していたのかも分からなかった。
私は記憶を失った。
そして記憶を失いやすくなってしまった。
だから毎日日記をつけて忘れないようにしている。
その日記が無意味でもきっといつか役に立つと思って。
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4/23
目が覚めたらボロボロの体の自分がいろんなチューブに繋がれていた。
痛い、という感覚よりも疑問が勝った。
病室は個室だった。
そして毎日違う花が飾られていて、それを誰が変えているのか分からなかった。
そして色々な検査の中でわかった。
どうやら記憶の一部を失っているみたいで。
でも不思議と違和感がないと思った。
私はもしかしたらこの記憶がこのボロボロの体の原因ではないかと思った。
見たいようで見たくない。
そう思って今は何も考えないことにした。
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