「那月おはよー、今日も棗くんと登校?」
「おはよう…もう疲れた」
「え?学校に来たばっかだけど!?」
ユイくんと学校に来るといつも疲れる。その代わりユイくんはいつも以上に楽しそうに私をからかう。
「莉奈、どうしたら動じない精神ができるんだろう…」
「え?突然どうした?瞑想でもするの?」
と、ツッコミを入れるがすぐに察してくれる。
莉奈は中学からの友人でとても頼れる。所謂姉御肌って言うやつなのかな。
「皆見さん、ちょっと八上さん借りていい?」
来た。
クラスの中心的存在である立花さん、立花 心音。
きっとユイくん絡みなんだろうな…と思いつつ席を立つ。
「…莉奈、ちょっと席外すね。ごめんね」
「え、ちょ…!那月!?」
いつもの事だから仕方ないと割り切る。
「ねぇ、皆見さんって由都くんのこと好きなの?可笑しいよね?ただの幼馴染のくせして一緒に登校とか…」
高校2年にもなって…、と。
“ただの”幼馴染、かぁ…。
そうだよね。ユイくんは私の事1ミリも意識してない。
だけど、そんなの私だって知ってる。
「……そんなこと皆見さんに言われたくないです」
自分自身の腕を握り震えを抑える。
初めて反発しちゃった。
どうしよう。
「は?…いつもみたいにヘラヘラして謝って行くのかと思ったのに、ウザ」
ウザイって…。
いつもみたいに謝って去っていっても何も変わらないじゃん、と心の中で呟く。こうやって声に出せないのが私の弱いところ。
「ウザイって…那月の事かな?立花さん」
突然背後から声が聞こえた。立花さんにははっきり姿が見えているのだろう、顔が体が固まったままう動いていない。私からはその姿は見えないけれどずっと一緒にいる私の好きな声だった。
なんで、いるの…?
「え、なんで、えっと…これは誤解だよ、えっと、そう、遊んでただけ。ね、八上さん!」
必死に言葉を紡いでいく立花さん。きっとユイくんに嫌われたくないんだろうな。と考えていると突然同意を求められる。
「え、」
そうだよね?ともう一度強く言われる。
「う、うん」
押しに弱いのも私のダメなところだ。
じゃあ、と言って去っていく立花さん。