「ねぇ、みうちゃんははやとくんが好きなのー?」
「なんで言うのー!」




横断歩道で止まっている小学生と出会う。やめてよー、と頬を膨らませている姿はとても可愛い。小学生でも好きな子がいるんだな、と思う。私が小学歳の時なんてユイくんとお兄ちゃんと家で遊んでいたな。私があまり運動が得意ではなかったし何より激しい運動が出来なかったのが原因だった。



「ふふっ」



懐かしい。
幼い頃のユイくんは今よりもっと素直だったけど不思議な子だった。よく私の知らない話をしてくれたし、手品が得意だっていって見せてもらったこともある。
「ほんと、懐かしいな…」


「何笑ってるの?」


背後から声をかけられ肩が跳ねる。
「ユイく、どうしたの!?」
ユイくんの頬には大き絆創膏かが貼られている。袖からのぞく手首には包帯が巻かれていた。

あぁ、といって眉を下げる。
「ボーッとしてたら階段踏み外しちゃってね」

そんな大したことないよ、と笑うユイくんを見ると悲しくなる。

「…そんなに私って頼りない」

ユイくんの手を取って小声で呟く。袖を捲ると所々切り傷があった。

「見ない方がいいよ」
「なんで?」
「気持ちのいいものじゃないでしょ」
私はゆっくり首を振る。ユイくんは傷が多い。顔に傷がつくのは珍しいが、上着の下は何かしらの傷や痣がある。ユイくんのお父さんが関係しているのは薄々勘づいていたけど、詳細を教えて貰えない。
「なんでユイくんばっかり…」

気づけば信号は青になっていて、小学生達はいなかった。周りは私たちを置いて先へ行く。

「ほら、行こう。遅れるよ」
「うん」


置いてかれないよう、私たちも先へ行く。
いつか、ユイくんにも置いていかれそうで、私はしっかりとユイくんのあとをついて行った。