「ただいま」
自分の声が虚しく響く。誰もいない悲しくて寂しい家。決して家庭崩壊という訳では無い。比較的仲のいい家族だと思う。
しかし両親は海外で仕事をしている。兄もいたけど、事故で亡くなった。たまに祖父母が来てくれるだけで幼い頃から私の周りにはユイくんしかいなかった。
「………はぁ」
ため息がこぼれる。
自分がもっと素直になることが出来たら、ユイくんとの関係は変わってたのかな。それが良い方向なのかは分からないけど。
素直になりたい。
伝えたい。
なんで。
なんで、ユイくんは私を惑わすのだろう。
中学三年生の頃、私はいじめにあった。ユイくんを好きだったクラスの中心的な子の目に止まったらしい。
初めは無視。
それがどんどんエスカレートして、ある夏の日に私は嫌がらせて体育倉庫に閉じ込められた。
真夏日で水分もとれないまま数時間閉じ込められたことにより、助けられた時にはもう意識が朦朧としていた。だけど、1番に助けに来てくれたユイくんの必死になった表情をみて、私を見つけて安堵した表情を見て、一瞬で恋に落ちてしまった。
「迷惑かな…」
今まで何度もユイくんに助けて貰ってばかりだ。きっと今日のこともユイくんを困らせてしまったかもしれない。
「だけど、好きだな…」
ずっと、ずっと、好きだ。
ゆっくり瞼を閉じる。