「平野さんに見られたのはたぶんあの日かな?たまたまあの辺の取引先と打合せがあって、駅から出たら買い物帰りで荷物抱えたあずささんとばったり。で、妊娠してるし荷物重そうだったから家まで運んであげたんだよね。」

顎に手を当てて、胡桃さんは記憶を探るように話してくれる。
そんな彼を、私はぼーっと見ていた。

信じていいんだよね?
これが、真実なんだよね?

嘘をついているようには見えないけれど、ひねくれたままの私はすんなりと信じることができない。

胡桃さんはすぐに私の感情を表情から読み取ってくる。

「まだ納得いってない顔してるけど。質問ある?」

苦笑いしながらも、優しく聞いてくれる。

だから私も、疑問に思うことはちゃんと言葉にした。