カレーはどれも美味しくて、あんなに大きいと思っていたナンもペロリと食べれてしまった。
さすがにお代わりはできなかったけど。

グリーンカレーは私が辛い辛いと連呼していたので、胡桃さんが多目に食べてくれた。
単品で頼んだタンドリーチキンは食べやすく切り分けて、私の取り皿へ自然に置いてくれた。

その行動、ひとつひとつが私の心に刻まれる。
これ以上好きになったって、どうすることもできないのに。

なのに、愛しくてどうしようもなくなるのだ。
この気持ちが届くことなんて一生ないのに。

一時の夢を見せてもらっているんだ。
なんて贅沢なんだろう。

私が自己完結をしているというのに、胡桃さんはお構いなしに息が止まるようなことを言い放った。

「平野さん、彼氏いる?」

持っていた水の入ったグラスを落としそうになる。

なぜ今ここで、それを聞くんですかー?