ハンカチを取り出した胡桃さんの表情は動かない。
居たたまれなくなって、私は先手を打つ。

「趣味に合わなかったらごめんなさい。」

私の言葉に、胡桃さんはふっと顔をほころばせて言った。

「いや?こんなおしゃれなの持ってないから、嬉しい。センスいいね。ありがたく使わせていただきます。」

そう言って、大事そうにカバンにしまう。
そんな些細な仕草に、私はいちいちドキドキしてしまう。
本当に、使ってくれたら嬉しいな。

「ごめん、立ち話。」

「あ、いえ、こちらこそ。」

突然、胡桃さんが思い出したかのように言う。

私ったら、もうちょっと話したいだなんて、おこがましい考えだった。
平日の仕事帰り、コンビニに立ち寄った後は早く帰りたいよね。