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翌朝、落ち着かない気持ちのままランニングを終え、急いで病院に向かった。
緊張と興奮で一瞬だけ病室に入るのを戸惑ったけれど、ゆっくりと深呼吸をしてからドアをノックして中に入った。


「美乃……?」


呼び掛けてみても、ベッドに潜っている美乃からの返事がない。


「美乃……?どうした……?」


俺は不安になって、恐る恐る再度声を掛けた。
彼女は布団から右手を出すと、その手でピースサインを作った。


「平熱です!」


ガバッと起き上がって満面の笑みで言った美乃につられ、俺も笑顔になった。


「やったな!」

「お昼ご飯食べて診察したら、外泊できるって! あとでパパとママも来るから!」


彼女は、俺に勢いよく抱き着いた。
俺たちは嬉しくて、何度も何度もキスをした。


「気分悪くないか?」

「絶好調!」


数時間後に昼食を完食した美乃は、俺の不安を余所にニコニコと笑っている。
彼女の両親が病院に着いた頃、ちょうど菊川先生も病室に来た。


「……うん、大丈夫みたいだね。じゃあ、準備ができたら病院を出ていいよ。明日の夕食までには戻ってくるようにね? それと、なにかあったら必ず連絡してね」


先生は診察を終えると、外泊許可を出してくれた。


「はいっ‼」


美乃は元気よく頷くと、嬉しそうにバッグを出した。


「もう準備してたのか」

「当たり前じゃない!」


苦笑を漏らした俺に、彼女が満面の笑みを見せる。
美乃の嬉しそうな姿を見て、俺は彼女の両親と顔を見合わせて笑った。


着替えを済ませた美乃からバッグを受け取り、ナースステーションに向かう。
そして、内田さんに声を掛け、俺たちは車で病院を出た。