「おい青司、もう一回訊くぞ。お前いまさらこの町に戻ってきて、どういうつもりだ。真白も巻き込んで……こいつの気持ち、ちゃんと考えてんのかよ?」

「……」


 青司くんは黙ったまま、黄太郎とわたしを見くらべている。

 わたしは怖かった。何を言われるのか。


 黄太郎と付き合ってたっていっても、何事もないまま一週間しか付き合わなかった。

 それ以上のことはなかった、って誤解は解けたけど……。

 でも、本当はどう思われたのかわからない。


 黄太郎にそう言われて、「やっぱりお店手伝わなくてもいいよ」なんてことになったら……。


「ごめん。二人ともちょっと待ってて。料理がひと段落したら、改めてちゃんと話すから……」

「あ、ああ」

「うん」


 黄太郎とわたしは少し肩透かしを食らったが、大人しく待つことにした。


 コンロの上にはフライパンが置いてあり、青司くんは戸棚から油を出すとそこに少量垂らして火をつける。

 ついでに上の換気扇のスイッチもオン。

 ファンの回る音がし出した。


 続いてニンニクをみじん切りにし、フライパンに入れ炒めていく。

 食欲を刺激される香り。

 さっきケーキを食べたばかりなのに……もうお腹が鳴りそうになった。

 買い物に行ったら適度な運動になったらしい。


 隣の黄太郎も似たような感じだった。あいかわらず鋭い視線を青司くんに投げかけているが、どことなく胃のあたりをなでさすっている。


 フライパンには、さらににんじんとたまねぎとしめじのみじん切りが加えられる。


「よく炒めないと、水っぽいカレーになっちゃうんだって。母さんが言ってた……」


 ひとりごとのようにそう言って、青司くんは木の穴あきべらでそれをかき混ぜる。

 ジュウジュウという音を響かせながら、具材がしんなりするまで炒められる。


 しばらくすると青司くんは冷蔵庫から合いびき肉を取り出して、それをまた一緒に炒めはじめた。

 火を通している間に、さらにひよこ豆の缶を開けてそれも投入する。


 最後にカレー粉、塩コショウをふって味を調える。

 と、そこで終わりかと思いきや。


「さらにこれを、入れるっと」

「え? それって……」


 なんと冷蔵庫から取り出されたのは、あの野菜ジュースだった。

 水ではなく野菜ジュース。

 それがひたひたにならない程度に入れられる。