川向こうのアトリエ喫茶には癒しの水彩画家がいます

「えっ、ちょっと待って青司くん。アトリエ兼、喫茶店……ってどういうこと? 青司くん画家なのに、なんで『喫茶店』を開こうとしてるの?」


 わたしは青司くんの目を見つめて、確認するように訊いた。

 青司くんはゆっくりと答える。


「たしかにちょっと突拍子すぎて、すぐには理解できないかもしれないけど……それでも、俺は本気だよ」

「……」


 わたしはますます混乱した。

 喫茶店を開く?

 そのためにこの町に戻ってきた?

 いままでいっさい連絡が取れなくなって、どこに行ってしまったのかすらもわからなくなっていたのに? 急に戻ってきたと思ったら、画家になっていて。で、しかも喫茶店を開きたい?



 どういうことなのかまったくわからない。

 いったいこの十年の間に、何があったのだろう。