その後、お昼になってしまったので、紫織さんたちは一旦大貫のおばあさんの家に戻ることになった。
青司くんは申し訳なさそうに言う。
「すみません。お昼のメニューはまだ考え中でして……お出しできるものがまだないんです」
「まあ、お昼までいただこうなんて考えてなかったわ。それに、もともとおばあちゃんと一緒に食べる予定だったのよ、私たち。あ、急きょこの人が一名増えたけど」
そう言って、紫織さんは旦那さんの肘をつつく。
わたしはその横でぼーっとしている菫ちゃんを見て、とあることを思い出した。
「あ、そういえば。菫ちゃんにお絵かきさせたいって言ってましたけど……やる時間、無かったですね」
「そうだったわ。すっかり忘れてた。お昼を食べ終わったらまた来てもいいかしら?」
青司くんは笑顔で答える。
「いいですよ。ただちょっと準備がありますので、少し間を空けさせてもらえませんか? 四時頃に来ていただけると助かります」
「わかったわ、じゃあまたその頃にね」
「あの……」
紫織さんの旦那さんが一歩前に出てきて、深々とお辞儀をする。
わたしと青司くんは顔を見合わせた。
「本当に今日は、ありがとうございました。まだ開店準備中、なんだそうですね? それなのに……突然来た僕にも、こんなご馳走をしていただいて……」
「ああ、いえ、そんな……」
申し訳なさそうに言う旦那さんに、わたしは恐縮した。
青司くんも似たような感じだったけれど、少し言いよどみながら顔を上げる。
「……あの。俺、お会いできて良かったです」
「青司くん?」
しっかりと、紫織さんの旦那さんを見つめる青司くん。
「どういう理由であれ、ここに来ていただいて……俺は嬉しかったです。あ、お名前……」
「小林です。小林学(がく)と言います」
「小林さん。俺はこの店のオーナーで、九露木青司(くろきせいじ)と言います」
名乗り合う二人。
わたしもあわてて自己紹介する。
「えっと……わ、わたしも、昔は紫織さんと同じお絵かき教室に通っていたんですけど……その……今は、ここの喫茶店で働く予定になっています。あ……羽田真白と言います」
「羽田さん。それから……九露木さん。改めてありがとうございました」
「あ、いえ」
「こちらこそ。ありがとうございました」
紫織さんたちは笑顔でお店を出ていく。
去り際、菫ちゃんが森屋さんを振り返って、小さく手を振った。
「あ? お、おう……」
森屋さんはびっくりした様子でぎこちなく手を振り返す。
どうやら菫ちゃんに気に入られてしまったようだ。
その森屋さんも昼休憩に行くと言って、出ていってしまった。
青司くんは申し訳なさそうに言う。
「すみません。お昼のメニューはまだ考え中でして……お出しできるものがまだないんです」
「まあ、お昼までいただこうなんて考えてなかったわ。それに、もともとおばあちゃんと一緒に食べる予定だったのよ、私たち。あ、急きょこの人が一名増えたけど」
そう言って、紫織さんは旦那さんの肘をつつく。
わたしはその横でぼーっとしている菫ちゃんを見て、とあることを思い出した。
「あ、そういえば。菫ちゃんにお絵かきさせたいって言ってましたけど……やる時間、無かったですね」
「そうだったわ。すっかり忘れてた。お昼を食べ終わったらまた来てもいいかしら?」
青司くんは笑顔で答える。
「いいですよ。ただちょっと準備がありますので、少し間を空けさせてもらえませんか? 四時頃に来ていただけると助かります」
「わかったわ、じゃあまたその頃にね」
「あの……」
紫織さんの旦那さんが一歩前に出てきて、深々とお辞儀をする。
わたしと青司くんは顔を見合わせた。
「本当に今日は、ありがとうございました。まだ開店準備中、なんだそうですね? それなのに……突然来た僕にも、こんなご馳走をしていただいて……」
「ああ、いえ、そんな……」
申し訳なさそうに言う旦那さんに、わたしは恐縮した。
青司くんも似たような感じだったけれど、少し言いよどみながら顔を上げる。
「……あの。俺、お会いできて良かったです」
「青司くん?」
しっかりと、紫織さんの旦那さんを見つめる青司くん。
「どういう理由であれ、ここに来ていただいて……俺は嬉しかったです。あ、お名前……」
「小林です。小林学(がく)と言います」
「小林さん。俺はこの店のオーナーで、九露木青司(くろきせいじ)と言います」
名乗り合う二人。
わたしもあわてて自己紹介する。
「えっと……わ、わたしも、昔は紫織さんと同じお絵かき教室に通っていたんですけど……その……今は、ここの喫茶店で働く予定になっています。あ……羽田真白と言います」
「羽田さん。それから……九露木さん。改めてありがとうございました」
「あ、いえ」
「こちらこそ。ありがとうございました」
紫織さんたちは笑顔でお店を出ていく。
去り際、菫ちゃんが森屋さんを振り返って、小さく手を振った。
「あ? お、おう……」
森屋さんはびっくりした様子でぎこちなく手を振り返す。
どうやら菫ちゃんに気に入られてしまったようだ。
その森屋さんも昼休憩に行くと言って、出ていってしまった。