紫織さん夫妻が今後の方針をあーでもないこーでもないと言い合っている。
主にそれぞれの両親にどうやって理解してもらおうかという作戦会議のようだった。
他の人はどうしてるかな、と思ってちらりと見ると、なんと森屋さんが菫ちゃんのケーキをじいっと見つめている。
「……!?」
菫ちゃんはまだケーキを食べ終わっていない。
一方、森屋さんはすでにお皿が空だった。
まさか……。
食べきれないなら代わりに食べてやろうか、とでも言い出すんじゃ?
そう思って見ていると、青司くんが、
「えっと……森屋さん、ケーキのおかわりします?」
と、すかさず提案していた。
森屋さんは足早にカウンターにやってくる。
「ああ。是非もらおう」
青司くんは何も言わず、差し出された皿の上に余っていたケーキを乗せた。
二個目のブドウのムースケーキである。
森屋さんは満足そうにうなづくと、またテーブル席に戻っていった。
なんというか……わたしの中の森屋さんのイメージがだいぶ変わりつつある。
最初はとても硬派な人だと思っていた。
無口で無愛想で。でも、あんなに甘い物に目がなくて、しかもおかわりまで所望する人だとは。
青司くんを見ると、うっすらと苦笑いを浮かべていた。
「なんとなく……母さんがあの人を好きになった理由がわかったよ」
森屋さんは人目もはばからず、二個目のケーキを美味しそうにほおばっている。
その様子にさすがの菫ちゃんも目を丸くしていた。
「うん。わたしもそれは……わからなくもないかな」
あれだ。
普段何にも興味なさそうな人が、異様な執着心をたまに見せると……そのギャップが面白い、もしくは可愛いとかって思ってしまう現象だ。
特にその人が強面な人とかであればなおさらだ。
先生もそのギャップにやられてしまったのだろう。
強面なのに果物好き、甘いもの好き。
そんな人に手作りのスイーツを食べさせたらどうなるのか。
初めはその反応に驚いたが、だんだん面白くなって、何度も食べさせたくなって、やがてその人といるのがなにより楽しくなってしまったのではないだろうか。
あくまで想像でしかないけれど。
わたしはそう思って、またケーキを一口食べた。
主にそれぞれの両親にどうやって理解してもらおうかという作戦会議のようだった。
他の人はどうしてるかな、と思ってちらりと見ると、なんと森屋さんが菫ちゃんのケーキをじいっと見つめている。
「……!?」
菫ちゃんはまだケーキを食べ終わっていない。
一方、森屋さんはすでにお皿が空だった。
まさか……。
食べきれないなら代わりに食べてやろうか、とでも言い出すんじゃ?
そう思って見ていると、青司くんが、
「えっと……森屋さん、ケーキのおかわりします?」
と、すかさず提案していた。
森屋さんは足早にカウンターにやってくる。
「ああ。是非もらおう」
青司くんは何も言わず、差し出された皿の上に余っていたケーキを乗せた。
二個目のブドウのムースケーキである。
森屋さんは満足そうにうなづくと、またテーブル席に戻っていった。
なんというか……わたしの中の森屋さんのイメージがだいぶ変わりつつある。
最初はとても硬派な人だと思っていた。
無口で無愛想で。でも、あんなに甘い物に目がなくて、しかもおかわりまで所望する人だとは。
青司くんを見ると、うっすらと苦笑いを浮かべていた。
「なんとなく……母さんがあの人を好きになった理由がわかったよ」
森屋さんは人目もはばからず、二個目のケーキを美味しそうにほおばっている。
その様子にさすがの菫ちゃんも目を丸くしていた。
「うん。わたしもそれは……わからなくもないかな」
あれだ。
普段何にも興味なさそうな人が、異様な執着心をたまに見せると……そのギャップが面白い、もしくは可愛いとかって思ってしまう現象だ。
特にその人が強面な人とかであればなおさらだ。
先生もそのギャップにやられてしまったのだろう。
強面なのに果物好き、甘いもの好き。
そんな人に手作りのスイーツを食べさせたらどうなるのか。
初めはその反応に驚いたが、だんだん面白くなって、何度も食べさせたくなって、やがてその人といるのがなにより楽しくなってしまったのではないだろうか。
あくまで想像でしかないけれど。
わたしはそう思って、またケーキを一口食べた。