「真白。どうしたの? 顔、赤いよ」

「えっ? あっ……」


 嘘……。わたし、顔赤くなってる?

 もうさすがに目を合わせていられなくて、視線をそらす。


「さっきから変だよ、真白」

「……」


 変って。こんな壁ドンみたいなことしてる青司くんの方が変だよ……。

 もう、何も言えない。

 こんな密室で至近距離で、そんな言葉をかけられたりしたら……。


 心臓が激しく鼓動を打ち続けている。
 その音が、青司くんに聞こえてしまうんじゃないかってくらい。


「さっきの、質問だけど。真白だったらどうしてた? 好きな人を忘れるために……他の人を好きになれる? 真白は……真白は誰かと、そういう関係になったことある?」

「……!」


 なんで。どうして今そんなこと訊くの?

 って言いたかったけど声が出なかった。だって、青司くんのわたしを見つめる目がとても真剣で……吸い込まれてしまいそうだったから。


 黄太郎(こうたろう)とのこと。

 それは、まだ話せない。

 背中に冷や汗が流れていく。体もなぜか小刻みに震えてくる。


「もし、そうなら俺は……」


 そう言いながら、青司くんがさらに近づいてくる。

 え?
 これって……。

 キス、されようとしてる?


「青……」


 しゃべろうとすると青司くんの唇に触れてしまいそうだったので、思わず息を、止めた。










「……すいませーん」




 どこかから、急に女性の声がした。

 たぶんお店の方だ。

 わたしたちはハッとなって体を離した。