「みんなに知らせた……? そっか、ありがとう」

「え?」

「俺は伝えられないから。真白がそうしてくれたなら、ありがたいよ」

「青司くん……」


 わたしはスマホを出すと、アドレス帳を表示させて青司くんに見せた。


「青司くん。ねえ、もう新しいの持ってるんでしょ? だったら……このみんなの連絡先、今すぐここで入れて。ここからは青司くんも、やらないと」

「え?」

「わたしは青司くんの味方。だけど、青司くんからもみんなに歩み寄らなきゃ。今すぐじゃなくていいけど……青司くんからの直接の言葉じゃなきゃ、伝わらないことってあると思う」

「うん……そうだね。わかった……」


 青司くんはそう言うと、自分のスマホを出してみんなの連絡先を入れはじめた。
 みんなには、後で言っておこう。
 青司くんに教えておいたって。事後報告になっちゃうけど。


「あ、そうだ。そういえば真白のアドレスも」


 ふいに青司くんが顔を上げて、わたしを見る。
 そっか。わたしの連絡先、無くなっちゃってるんだっけ。

 わたしのアドレスはみんなとは違って、昔から一回も変更してないけど、青司くんは前の携帯ごとなくしちゃったから、わたしのアドレスがわからなくなっちゃってるんだ。


「ごめん……教えてくれる?」

「いいよ。このへんに……自分のプロフィールがあると思う」

「うーんと、ここ?」

「違う、そこそこ」


 青司くんが画面をこちらに見せながら訊いてくるので、わたしは指差しして教えてあげた。

 でも、うっかり違うところをタッチされそうになったので、わたしはそれをあわてて止める。

 昔のメールとか……消さずに残してるのを見つかったら、困る。
 特に黄太郎とのメールとか。

 今は便利なチャットアプリがあるけれど、わたしは他人との過度な関わりが苦手というのもあって、それをインストールするのを意識的に敬遠していた。

 昔から連絡手段はメールか電話。
 これには一応わけがあって、「過去に青司くんとそれで連絡を取りあっていた」というのを忘れたくない、という思いがある。