「いや、やっぱり後悔……はもうしたくない。だからもう家族とかも、なりふり構ってる場合じゃないよね……」


 そうだ。これからは、たとえどんな目に遭っても。誰に何を思われても。

 後悔しないようにしなきゃならない。


 わたしのこの想いを伝えるまでは。

 またいなくなられたり、誰かと青司くんが恋人同士になる前に、手を打たなきゃいけない。そんなことになったら、わたしは今度こそ人として立ち直れなくなってしまう。

 自分勝手すぎるとは思うけど……でもわたしは、わたしの場合は、そうしなければ前に進めないとわかっていた。


 これはきっと、最初で最後のチャンス。

 だからしっかりと前を向いていこうと思った。


「あ、そうだ」


 メールが届いていたのを思い出して、バッグからスマホを取り出す。

 確認すると、かつての「お絵かき教室」の仲間でもあり、親友の紅里(あかり)からだった。

 仕事の愚痴が書かれている。

 わたしは、青司くんのことを伝えようとして、でもやっぱりまだ伝えられなくて、結局当たり障りのないことを返してしまった。