「ふう……」

 洗い終わって、鏡の中の顔を見つめていると、あらためて平凡な自分の容姿に嫌気がさしてきた。
 バイト終わりだからか、青司くん同様疲れがはっきりと出ている。セミロングの髪も少しぼさっとしていたし、メイクも今日はマスカラするのを忘れていた。


 ああもっと、マシな恰好で会いたかったな。青司くんに。

 なんせ十年ぶりに会えたんだから。

 でもあんな風に急に知らされたら、メイクし直すヒマなんてなかった。

 だって、ずっと会いたくて会いたくて。青司くんを渇望しつづけていんだから。


「真白ー、帰ってきたのー?」

「……うん、ただいまー」


 キッチンの方から聞こえてくる母の声に、気のない返事をする。


「今日はおでんよー。早く来なさーい」

「はーい!」


 二回目は少し大きな声で返した。

 この家にはあと父と弟がいるのだけど、父はいつも帰りが遅くて、弟は月に一回帰ってくればいい方だ。今あの子は東京の大学に通っている。向こうで一人暮らしをしているけど、いずれはわたしの友人たちのようにあっちで仕事も見つけるつもりなのだろう。


 一人で、寂しくないのだろうか。



 わたしは……寂しい。

 自分の周りから誰かがいなくなるのは。