「ご、ご馳走様でした!」

「え? もう帰るの?」

「うん。あ……明日もまた来ていい? 青司くん」


 空になったお皿を持ちながら、ためらいがちにそう訊いてみる。

 断られたらどうしよう。「わたしも一緒にお店をやる」って速答しなかったばかりに、興味を失われたりしてないだろうか……。


「うん、ぜひ。オープンまでいろいろやることがあるから、相談だけでも乗ってくれると助かるな。お客様に出そうとしているメニューの考案とか、試食とか……一人じゃ心もとなくって」

「あ、うん……! わ、わたしにできることがあったら遠慮なく言って」


 さっきの返事はどうやら好意的に受け取ってもらえたらしい。「考えさせて」なんてえらそうに言っちゃったけど案外大丈夫だったようだ。ああ、良かった。


 メニューの試食、かぁ。

 他にどんなケーキやドリンクを出す予定なんだろう。わたしは思わずいろいろ想像してしまった。

 きっとどれもがみんな、かつて桃花先生が作ってくれたような美味しいおやつなんだろうな。

 そう思うとかなり楽しみになってきた。


「えっと、オープンって……そういえばいつ頃の予定なの? 青司くん」

「んー、さっきいつでも開けるなんて言っちゃったけど、本当は準備ができ次第……かな。大目に見積もって四月の上旬までには始めたいって思ってるけど」

「そっか……。じゃあ明日、バイトに出勤する前か退勤した後にまた来るよ。午前中か夕方以降になるけど、それでもいい?」

「うん、構わないよ」

「じゃあまたその時に」