「良かった。あ、でもそれって……母さんと同じ味になってる?」

「え? うーん。どうだろう、もうずいぶん前のことだから正確な味をはっきりとは思い出せないけど……でも、たぶん同じ味のような気がする。だって、とっておも美味しい上にと~っても幸せな気分になったからさ」

「そう……か。なら、良いか。ありがとう」


 そう言うと、青司くんも自分のチーズケーキを食べはじめた。

 二人ともケーキの内角は九十度だった。これはホールケーキの四等分で、わりと大きな扇形である。

 もしかして、わたしが今日ここに来なかったら……青司くんはこれをひとりで食べるつもりだったんだろうか。

 全部のケーキをひとりで食べてる彼の姿を想像すると、なんとなくおかしくなった。


「ふっ……ふふふっ」

「ん、どうした?」

「あ、ううん。なんでもない。ねえ青司くん、さっきの返事……だけどさ」

「うん」


 楽しい気分になってるうちに、さっきの返事をちゃんとしよう。

 お誘いは……突然ですごくびっくりしたけれど、でもちゃんと考えなきゃいけないことだ。だって青司くんは、きっと覚悟してここに帰ってきたんだろうから。

 わたしや、みんなから非難されるかもしれないってことを考えなかったわけじゃないと思う。

 さっきの様子を見る限り、わたしはそう感じた。


「わたしにお店を一緒に手伝ってほしい……ってやつ。あれ、本気なんだよね?」


 青司くんは真剣な瞳でこちらを見ている。


「うん、本気だよ」