みなと一緒に記念写真を取ってから、少しずつ切り分けて食べる。

 我ながら、上手に作れたと思う。
 ふわふわのスポンジに、甘い生クリーム、そして、わずかに酸味のあるイチゴ。
 それらが口の中で絶妙に混ざり合う。


「あ、真白。それ、食べないんならちょうだーい」

「うん、いいよー」

「ありがと!」


 イチゴが大好きな紅里。

 わたしは彼女のために一番上のイチゴをとっておいた。それをそっと彼女の皿に移す。


「紅里」

「ん?」

「今日はありがとね」

「ああ、いいのよ。こういうときはお互い様でしょ」


 もぐもぐと口を動かしながら、紅里がそう言って笑う。


「ううん。いつも助けられっぱなしだよ。本当にありがとう」

「イチゴくれたから別にいいよー」

「また……。紅里は良い人過ぎるよ。でも、これからは……わたしが紅里の力になれたらいいなって思う。いつもいつも励ましてもらったから。今度はわたしの番。本当にいままでありがと、紅里」

「真白……」


 紅里は十分に味わうと、ごくんと飲みこんでから言った。


「ふっ。そんなこと生意気なこと言って。でも、そうなってくれるとあたしも嬉しいよ。真白、頑張ってね」

「うん。紅里も」


 そう言うとわたしたちは笑い合って、そして額をこつんと寄せ合った。


「ちょっと、二人とも?」

「へっ?」

「うわっ」


 なんと、至近距離に青司くんがいた。
 
 すぐ後ろから声をかけられたようだ。

 青司くんはじとっとした目でわたしを見つめている。


「あ、青司くん……?」

「真白、さっきのケーキ嬉しかった。ありがとう。でも……ちょっと今、紅里と顔が近くなかった?」

「へっ?」


 紅里とともにわたしは耳を疑った。

 まさか? まさか……今のを青司くん……?


「おいおい青司、そこまで独占欲強いのはさすがに引くぞ~?」


 黄太郎がそう突っ込んできたが、わたしはまだ青司くんの言葉が信じられなかった。

 でも、彼の目は真剣そのもの。

 わたしは一気にあわてた。


「え、あの、青司くん!? わ、わたしたち、別にそういうんじゃないから」

「そういうんじゃないって……どういうこと?」

「えっ、だから……。な、なんでもないって!」

「なんでもないって、だから……どういうことなのかな?」

「だ~か~ら~! ただの友達!」


 紅里も黄太郎もあきれ返っている。

 わたしは青司くんの誤解を解くために、しばらく説明しつづけるはめになった。


 まさか、十年後にこんな未来が待っているとは……。


 それでも、今のわたしは幸せだ。

 この幸せがこのお店にあふれますように。


 甘いショートケーキを食べながら、わたしはそう願った。