「真白……真白……。やっぱりきみの絵は最高だ。あれは……今の俺?」
「ええと……うん。そう描いたつもり」
「そっか。ありがとう……」
ぎゅう、とさらに抱きしめる力が強くなる。
どうしたんだろう。
わけがわからなくて、涙が思わずあふれてくる。
「せ、青司くん……」
「ねえ、やっぱり俺が描いた真白の絵、店に飾りたい」
「ええ!?」
「あと、この真白が描いてくれた俺の絵も飾りたいんだけど、いい?」
「えええっ!?」
衝撃的な発言の連続に、わたしはぐいっと青司くんの腕から逃れた。
「む、ムリムリムリ! 恥ずかしいって、言ったじゃん!」
「恥ずかしくないよ。そんなこと言ったら、俺は水彩画家を辞めなきゃならない」
「ええっ!?」
「だって、俺が描いた絵も、真白が描いた絵も……とっても素晴らしいんだ。これだけは俺の感性に嘘はつけない。それを否定するなら、真白、俺は画家としてもうやっていけないよ」
「そんな……」
わたしはしゅんと落ち込む青司くんに参ってしまった。
「そんなこと言われたら、ダメって言えないじゃない……」
「いいの?」
「……うん。そう言われちゃね」
「やった!!」
青司くんは満面の笑みになると、いそいそとテーブルに並んだ二つの絵を店に飾りはじめた。
わたしが描いたのはちゃんと額に収められて、青司くんの絵の隣に並べられる。
飾られたのは玄関の側ではなく、道路に面した窓際の壁だった。
なんだか青司くんの素敵な絵と比べられそうで嫌だけど、でもお世辞でも青司くんに褒められた絵なんだから、堂々としていようと思った。
「ねえ、真白」
「ん?」
朝の爽やかな光が、店の中に入ってきている。
テーブル席には穏やかな空気が流れていた。
「ここに来た人たちは、みんな母さんの絵を見ていた。楽しかった昔を思い出して、癒されていたように思う。俺たちも、誰かを癒せる存在になれたらいいね……」
「うん、そうだね……」
わたしたちはどちらからともなくお互いを見つめた。
そして、そっと唇を重ねた。
わたしは彼を見上げて言う。
「青司くん。少なくとも、わたしにとって今の青司くんは……そういう存在だよ」
「真白……。それは、俺もだ。きみに毎日癒されてる。これからもよろしく、真白」
「うん……」
ドキドキするけど、今言わないといけない気がした。
覚悟を決めて、言う。
「青司くん。……好き」
「真白……」
「十年前も好きだったし、会えない間もずっと好きだったけど……。今、あらためて思ってる。好き」
「俺も。真白が……好きだ」
「せ……」
見ると、青司くんの顔が真っ赤だった。
わたしもたぶん同じ顔をしてるんだろう。
なんだかおかしくなって、二人とも笑い合った。
でも、笑い終えるとまたどちらからともなくキスをする。
これから、どうなるかはわからない。
店も、お客さんも、わたしたちの仲も。未来への不安がないと言ったら嘘だ。
でも、その恐怖心を無くすには丁寧にひとつずつ関わっていくしかない。
わたしはそれを、青司くんの喫茶店を手伝っていくうちに学んだ。
いろんな人と話をしていく中で学んでいった。
その日は、プレオープンの日に向けて、チラシの作成や当日の動きなどをもう一度チェックしあったりした。
三月はもう半ばを過ぎようとしていた。
「ええと……うん。そう描いたつもり」
「そっか。ありがとう……」
ぎゅう、とさらに抱きしめる力が強くなる。
どうしたんだろう。
わけがわからなくて、涙が思わずあふれてくる。
「せ、青司くん……」
「ねえ、やっぱり俺が描いた真白の絵、店に飾りたい」
「ええ!?」
「あと、この真白が描いてくれた俺の絵も飾りたいんだけど、いい?」
「えええっ!?」
衝撃的な発言の連続に、わたしはぐいっと青司くんの腕から逃れた。
「む、ムリムリムリ! 恥ずかしいって、言ったじゃん!」
「恥ずかしくないよ。そんなこと言ったら、俺は水彩画家を辞めなきゃならない」
「ええっ!?」
「だって、俺が描いた絵も、真白が描いた絵も……とっても素晴らしいんだ。これだけは俺の感性に嘘はつけない。それを否定するなら、真白、俺は画家としてもうやっていけないよ」
「そんな……」
わたしはしゅんと落ち込む青司くんに参ってしまった。
「そんなこと言われたら、ダメって言えないじゃない……」
「いいの?」
「……うん。そう言われちゃね」
「やった!!」
青司くんは満面の笑みになると、いそいそとテーブルに並んだ二つの絵を店に飾りはじめた。
わたしが描いたのはちゃんと額に収められて、青司くんの絵の隣に並べられる。
飾られたのは玄関の側ではなく、道路に面した窓際の壁だった。
なんだか青司くんの素敵な絵と比べられそうで嫌だけど、でもお世辞でも青司くんに褒められた絵なんだから、堂々としていようと思った。
「ねえ、真白」
「ん?」
朝の爽やかな光が、店の中に入ってきている。
テーブル席には穏やかな空気が流れていた。
「ここに来た人たちは、みんな母さんの絵を見ていた。楽しかった昔を思い出して、癒されていたように思う。俺たちも、誰かを癒せる存在になれたらいいね……」
「うん、そうだね……」
わたしたちはどちらからともなくお互いを見つめた。
そして、そっと唇を重ねた。
わたしは彼を見上げて言う。
「青司くん。少なくとも、わたしにとって今の青司くんは……そういう存在だよ」
「真白……。それは、俺もだ。きみに毎日癒されてる。これからもよろしく、真白」
「うん……」
ドキドキするけど、今言わないといけない気がした。
覚悟を決めて、言う。
「青司くん。……好き」
「真白……」
「十年前も好きだったし、会えない間もずっと好きだったけど……。今、あらためて思ってる。好き」
「俺も。真白が……好きだ」
「せ……」
見ると、青司くんの顔が真っ赤だった。
わたしもたぶん同じ顔をしてるんだろう。
なんだかおかしくなって、二人とも笑い合った。
でも、笑い終えるとまたどちらからともなくキスをする。
これから、どうなるかはわからない。
店も、お客さんも、わたしたちの仲も。未来への不安がないと言ったら嘘だ。
でも、その恐怖心を無くすには丁寧にひとつずつ関わっていくしかない。
わたしはそれを、青司くんの喫茶店を手伝っていくうちに学んだ。
いろんな人と話をしていく中で学んでいった。
その日は、プレオープンの日に向けて、チラシの作成や当日の動きなどをもう一度チェックしあったりした。
三月はもう半ばを過ぎようとしていた。