ベンチから立ち上がり、紅里の両手をそっと取る。
「真白……?」
「失敗どころか……大成功だよ。わたしは失敗も成功もしてない。なんにもしなかった十年間だった。周りの人がどんなにわたしにいろいろ言ってくれても、なんにも動こうとしなかった。黄太郎にも紅里にも、知らないうちにいっぱい傷つけてしまってた。わたしはずっと、ダメダメ人間だったんだよ」
「そんな、ことは……」
「ううん。そうだったの。でも、青司くんがまたここに帰ってきてくれて、ようやくもう一度チャンスが巡ってきた。紅里や黄太郎にも、ちゃんとしろって言われて、ようやくもう一度前に進もうって思えたんだよ。それは、やっぱり自分ひとりじゃできなかったことなの」
紅里がわたしをじっと見上げている。
その目がうるんでいるのを、わたしも泣きそうな思いで見つめていた。
「紅里が……ずっと、わたしにはできなかったことを頑張ってやってきてくれたから、わたしも紅里みたいに頑張ろうって……頑張んなきゃって、思えたんだよ。きっかけは青司くんが帰ってきてくれたことだったけど……でも、紅里が頑張ってこなかったら、わたしはたぶん今みたいにもう一度動こうって、もう一度やり直そうなんて思えなかった」
「真白……」
「だから、絶対失敗なんかじゃない! 紅里はまた、必ず別の夢を見つけられる。そうできるって信じてる。なんなら、青司くんに今から告白しに行ったっていい。わたしに遠慮なんかしなくていいんだよ。なんでもやって。なんでも試してみて。だから、二度と後悔しないでほし……」
そこまで言うのが限界だった。
わたしは涙があふれてあふれて、しかたがなかった。
だって、紅里がいたからこれまで生きてこられたんだ。紅里はいつもわたしを励ましてくれた。友人もやめないでいてくれて、ずっと側にいてくれてた。
わたしはそんな優しくて、頑張り屋の紅里に自分を重ねて、できないことを代わりにやってくれてるみたいに勝手に思ってた。
わたしはなんにもできないけど、できる紅里を応援することで、なんとか生きる気持ちをつないでいたんだ。
そんな、恩人とも呼べる親友に、こんなことくらいで不快になんてなったりしない。
「まーた、そんなこと言って……。あ、あんたこそ、後悔しても遅いんだからね! あたしが……もし青司くんに告白して、OKもらっちゃったら……ど、どうすんのよ!」
紅里もぼろぼろと泣きながら言う。
「それは……そのときだよ。でももしそうなったとしても、またわたしもチャレンジするから、いい……」
「あ、あははは! そ、それなら……それならいいよ。わかった。ふふふふ……」
ぐいっと手を引かれて、紅里がわたしの腰に抱き付いてくる。
そしてそのまま声を殺して泣いた。
わたしはそんな紅里の後頭部にそっと手を置く。
「紅里……。ありがとう、話してくれて……」
「そんな、それは……こっちこそだよ。ありがとう、真白」
「真白……?」
「失敗どころか……大成功だよ。わたしは失敗も成功もしてない。なんにもしなかった十年間だった。周りの人がどんなにわたしにいろいろ言ってくれても、なんにも動こうとしなかった。黄太郎にも紅里にも、知らないうちにいっぱい傷つけてしまってた。わたしはずっと、ダメダメ人間だったんだよ」
「そんな、ことは……」
「ううん。そうだったの。でも、青司くんがまたここに帰ってきてくれて、ようやくもう一度チャンスが巡ってきた。紅里や黄太郎にも、ちゃんとしろって言われて、ようやくもう一度前に進もうって思えたんだよ。それは、やっぱり自分ひとりじゃできなかったことなの」
紅里がわたしをじっと見上げている。
その目がうるんでいるのを、わたしも泣きそうな思いで見つめていた。
「紅里が……ずっと、わたしにはできなかったことを頑張ってやってきてくれたから、わたしも紅里みたいに頑張ろうって……頑張んなきゃって、思えたんだよ。きっかけは青司くんが帰ってきてくれたことだったけど……でも、紅里が頑張ってこなかったら、わたしはたぶん今みたいにもう一度動こうって、もう一度やり直そうなんて思えなかった」
「真白……」
「だから、絶対失敗なんかじゃない! 紅里はまた、必ず別の夢を見つけられる。そうできるって信じてる。なんなら、青司くんに今から告白しに行ったっていい。わたしに遠慮なんかしなくていいんだよ。なんでもやって。なんでも試してみて。だから、二度と後悔しないでほし……」
そこまで言うのが限界だった。
わたしは涙があふれてあふれて、しかたがなかった。
だって、紅里がいたからこれまで生きてこられたんだ。紅里はいつもわたしを励ましてくれた。友人もやめないでいてくれて、ずっと側にいてくれてた。
わたしはそんな優しくて、頑張り屋の紅里に自分を重ねて、できないことを代わりにやってくれてるみたいに勝手に思ってた。
わたしはなんにもできないけど、できる紅里を応援することで、なんとか生きる気持ちをつないでいたんだ。
そんな、恩人とも呼べる親友に、こんなことくらいで不快になんてなったりしない。
「まーた、そんなこと言って……。あ、あんたこそ、後悔しても遅いんだからね! あたしが……もし青司くんに告白して、OKもらっちゃったら……ど、どうすんのよ!」
紅里もぼろぼろと泣きながら言う。
「それは……そのときだよ。でももしそうなったとしても、またわたしもチャレンジするから、いい……」
「あ、あははは! そ、それなら……それならいいよ。わかった。ふふふふ……」
ぐいっと手を引かれて、紅里がわたしの腰に抱き付いてくる。
そしてそのまま声を殺して泣いた。
わたしはそんな紅里の後頭部にそっと手を置く。
「紅里……。ありがとう、話してくれて……」
「そんな、それは……こっちこそだよ。ありがとう、真白」