「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした!」
わたしたちが食べ終わると、ちょうど青司くんも自分の分のカレーを食べ終えたところだった。
青司くんはすでに、カウンターの向こう側からわたしの左隣の席に移動している。
「ねえ、青司くん」
「あ、そうだった。真白、どうだった? 試食した感想」
わたしの本来の役割を思い出した青司くんが、急に訊いてきた。
ちょうど今わたしもそれを伝えようと思ったところだったんだけど……ちょうどいい、話すことにする。
「うん。とっても美味しかったよ。黄太郎は辛がっていたけど、わたしは大丈夫だった。ゆで卵とか、卵を乗せるともうちょっとマイルドになるかもね。サラダとかはつけないの?」
「ああ、ゆでたまご。忘れてたなあ……。母さんも目玉焼きつけてくれてたし、せめてゆで卵は乗せようかな。サラダは……カレーの中にたくさん野菜が入ってるからいいかなと思ったんだけど。見栄えの問題?」
「そう」
「うん。そっか。少なくても箸休めになるし、やっぱりつけた方がいいね。わかった」
そんな会話をしていると、黄太郎が背後からぼそっと話しかけてくる。
「真白、やっぱ働く気なんだな。ここで」
「……うん」
振り返り、わたしはちゃんと黄太郎に向き直る。
「青司くんを手伝ってあげたいの。わたしも……もう立ち止まっていたくないんだ。前に、進みたいんだよ」
「そうか」
「……黄太郎」
今度は青司くんの声が背中から聞こえてくる。
大好きな、独特の落ち着く声。
その響きがすぐ近くで聞こえると、わたしはどうにもどきどきしてしまう。
「俺は……もう一度ちゃんと真白に向き合うつもりだ。そして、強くなる。強い人間になって、真白も、ここに来たお客さんも、みんな幸せにできるような人間になる。黄太郎……。そんな俺を、見守っててくれないか」
「……」