最終で帰る日は、片手で数えられる程度。友達は狭く浅く。社会人になってから、年に数回会う程度。こんなに遅い時間でも、歩道橋の下は車が沢山通っていて、街は光り輝いている。すれ違う人は私を知らない人。すぐに噂が広がるような、狭いところから親の反対を無視して逃げ出し、自由を得た。それなのに、後悔ばかりが私に付き纏う。

歩道橋の真ん中で、私と同じように下を眺めている男性が居る。綺麗に染められた金髪は、この街ではよく見かけるけど、昼の明るい時間帯に見るよりも夜の方が綺麗見える。手すりに腕を乗せぼーっと眺めているその横顔は、私の知っている顔とは少し異なる。それでも、面影を残した見覚えのある顔だ。

「ハル?」

車の走る音、通り過ぎる人達の会話。聞き取りづらい私の声は、しっかり届いて私に視線が向く。少しの間を挟んでから、驚いた表情をし、私に近づく。同じくらいだった筈の身長は、私がハルの肩辺りになるぐらいに成長していて。伸びた前髪から覗く目は、心当たりのある目だ。

「久しぶり。小学生以来?」
「久しぶり。俺は時々見かけてたけど、話すのは小学生以来か。」
「こっちに来てたんだ。」
「あー…。中学卒業して、こっちに来た。」

少しぎこちない会話。十数年前、私達がどのように話していたのかは、もう記憶に残っていない。

ハルは、弓弦の友達であって私の友達ではない。家に来て、弓弦と遊んでいる所に時々入れてもらって遊んだくらい。それに、4歳差というのは、小学校までは一緒に学校生活を送れるけど、中学と高校になると入れ違いになって会う事はなくなる。弓弦が中学に上がってからは、ハルが家に来るのも無くなった。

「そっちは、社会人になってから?」
「大学から。だから、こっちにきて6年目かな。」
「弓弦は?アイツもこっちに来てんの?」
「うん、大学に通ってる。流石に、一緒に住むのは嫌だからって、別々のマンション借りてるけどね。」