「…………ねぇ」



沈黙を破った澪の声に、稚尋はピクリと反応する。



「ん?」



「あっ、あの……さ、一つ聞いていい?」



「んー……何」



稚尋は切れた口元を気にしながら答えた。



稚尋は優しい。



私は、大切にされている。


本当に…………そう思ってしまう。




私は馬鹿だから、簡単に人を信用してしまう。





「あの、学校裏サイトって……知ってる?」




その言葉を聞いた稚尋の顔が、少し暗くなったように見えた。



気のせいだろうか。




「知ってる」


稚尋は、静かに答えた。


「じゃあ、内容も知ってるよね?」



夜の町に、二人の足音だけが響いていた。



二人の間に流れる空気はとてもピリピリしていて、張り詰められた糸のようだった。




一言一言が、鉛のように重たい。


澪の言葉に、稚尋は苦笑いをしながら言った。






「知ってる。俺と姫のことだろ?」





「……ちゃんと、わかってたんだね」




「まぁな」



稚尋はそう言って、困ったように眉を下げた。





そんな稚尋の態度を見た澪は、ピタリとその場で足を止める。



そんな澪の行動に、稚尋も不思議そうに首を傾げながら足を止める。




そして、澪は言った。





「今、ここでキスしてよ」