澪はうつ向いてしまう。
そんな澪に、稚尋は言った。
「……だよな、いきなりだったし……わるい」
そう言って、稚尋は一人で歩き出した。
なんだか、今日はやけにあっさりしている。
調子が狂う。
澪は稚尋に駆け寄り、背中を軽く叩いた。
「ま、いーよ。今日くらい」
今日の稚尋はなんだか変だ。
だから今日は、私も変になろう。
俯き加減に言う澪に、稚尋は優しく手を差し延べた。
「……バーカ」
稚尋の歩幅に合わせ、澪も足を進めた。
大丈夫。
今なら、誰もいない。
稚尋は……今何を考えてるの?
しかし、その場にいたのは、澪と稚尋だけではなかった。
二人は気がつかなかった。
「……朝宮、澪」
二人を見つめる、不吉な影に。