「はぁっ……はぁ……」
息を乱しながら、澪は昇降口までの道を走った。
辺りは薄暗くなっていて、もはや人の気配すらない。
こんな状態で、本当に稚尋は自分を待っているのだろうか。
不安になりながら、澪は稚尋の姿を探した。
そこに稚尋はいた。
信じられなかった。
本当に、いた。
本気なの……?
自惚れちゃうよ、私。
「稚尋…………?」
澪は稚尋に話しかける。
隅で立っていた稚尋は、ゆっくりと振り向き、澪の姿を捕らえた。
そして。
「……澪?」
澪の名前を呼んだ。
心臓が、止まってしまうかと思った。
昇降口の片隅に、稚尋は立っていた。