「……あ……あの……」



戸惑う澪は、その場から動けなくなってしまった。


少年は怯える澪の姿を見つめ、ため息混じりに口を開く。



「さっきの話聞いてた。お前、コバミが本気でお前のことフッたなんて思ってんのか……?」



「……え?」



何言ってるの?


澪は少年の突然の言葉に目を見開いた。


訳がわからない。


澪は確かに今日、同級生の小林 大輔にフラれた。


それは変わりようのない事実だ。


それなのに。



「お前、俺たちの間でなんて呼ばれてるか……知ってる?」



澪には少年の目的が全く読めなかった。



「知らない」



少年は澪の言葉にニヤリと笑い、澪の耳元で囁いた。



「泣き虫姫」



え?



「なっ……!?」



泣き虫姫!?



私が!?



ダメだ、頭が追いつかない。



「姫……コバミより、俺と遊ばない?」



少年はそう言って、澪との距離を詰める。



「……やっ……やめてよ!」



少年のいきなりの行動に、澪は驚きのあまり少年を突き飛ばしてしまった。