「嫌だったらっ!!」
どんなに拒まれようとも絶対に手にしてみせる。
“あの人”と澪を重ねていた稚尋は、澪の強気な態度に彼女が強い女の子なのだと思い込んでいた。
けれど、それは違った。
「……!」
澪は稚尋の目の前で、ボロボロと涙を流した。
稚尋もそれには流石に驚いた。
「泣くなよ……」
ああ、そうか。
そんな澪の姿に、稚尋は妙に納得していた。
稚尋は、澪をてっきり男好きの男たらしだと思っていた。
今まで相手をしてきた女が皆口を揃えて同じようなことを言っていたせいもあった。
けれど、違ったみたいだ。
ウブな彼女は本当にすぐ泣く。
だから“泣き虫姫”なんだな。
事実が分かった途端、稚尋はどうしようもない愛しさを感じた。
今まで感じたことのない、胸の詰まるような感覚だった。
突然の涙に動揺した稚尋は、気まずい空気に思わず視線を泳がせる。
たった今、初めて自分が一目惚れした女の子。
こんなことも初めてだった。
ゆっくりでいい。
君から俺を求めるまで、俺は待ってみよう。
絶対、俺は君を手に入れてみせる。