稚尋にとって澪は、初めて一目惚をした相手だった。
今までも、恋は何度か経験した。
しかしこれ程までに自分が欲するような恋は初めてだった。
稚尋は、初めて自ら一人の女を求めた。
きっと彼女だって自分に迫られたらOKするに決まっている。
稚尋は、自分の魅力に酔いしれ、自信に満ち溢れていた。
そうしていると、保健室の保健医が帰って来た。
彼女の泣いてる理由は、小林と言う男にフラれたからだった。
その男も、馬鹿げた協定の奴。
稚尋に協定を気にする理由などなかった。
今はただ、目の前にいる女の子を手に入れたいだけ。それだけだった。
しばらくして、保健医が保健室から出ていった。
澪は稚尋のベッドの隣のベッドに横になった。
稚尋はそれを確認するかのように、澪のベッドに侵入した。
「お前、朝宮澪?」
稚尋の声を聞いた澪は、目を見開き驚いていた。
当然の反応だ。
そうして稚尋は、澪にいくつか質問をする。
そして。
「お前、俺達の間でなんて呼ばれてるか……知ってる?」
「知らない」
「泣き虫姫───……」
あの、会話をした。