事が済むと、稚尋は無表情のまま、相手の女に言葉を投げ掛ける。
「バイバイ」
そんな稚尋の顔を、信じられないというような顔で女は見た。
そして一変、甘えた声で稚尋に擦り寄ってくる。
「ねぇ……本当にもう会ってくれないの?」
……めんどくさい女。
呆れてため息が出る。
こんな状況も、一体何度経験しただろうか。
「あのさぁ?俺、そういう女って無理なんだよね」
稚尋の言葉に、女は怒りながら部屋を出ていった。
後に残るのは、なんとも言えない倦怠感。
それだけだった。
稚尋は一人になった用具室で、大きなため息をつく。
無音の室内からは遠くから部活動の音がする。
自分は、一体何をしているのだろうか。
そんなことを考えながら、稚尋は夕方の保健室の扉を開いた。
案の定、誰もいない。
どのくらい眠っていたのだろう。
気がつくと、人の気配がした。