「先生……頭痛いんで、保健室行ってきまーす!」
今までの俺は、いつも毎日を適当に生きていた。
「桜君!?ちょ、待ちなさい!」
「いやぁ……先生。無理です」
そう言うと、稚尋は担任の鈴葉の言葉を無視し、授業を抜け出した。
それはもう、日常的な一コマになっていた。
今さらクラスの人間はそんな稚尋を気にも留めず、一心不乱に黒板を書き写す。
教室を出た稚尋は、ある場所に向かっていた。
稚尋にとって、癒しと呼べる場所。
そこは今は誰も使っていない用具室だった。
学校の教師だって、知らない人間の方が多いかも知れない。
そんな秘密の場所に、稚尋の秘密があった。
「よう、待った?」
満面の笑みを浮かべる稚尋。
「……もぉ~遅いよ」
そんな稚尋を見つめ、頬を赤らめながら上目使いで稚尋を見つめる女。
相手は、日々違った。
寂しさを埋めるためだけに始めた秘め事は、いつしか取り返しのつかないところまできてしまっていた。