しかし、澪が床に倒れることはなかった。
「稚……尋、ゴホッ……」
稚尋が澪を支えてくれていたからだ。
今の澪には、立ち上がる力もない。
そんな澪の額に稚尋はそっと触れた。
稚尋の手は、大きくて冷たかった。
「……全然熱下がってねーな。お前置いて帰れねーって」
それからの稚尋は澪が驚くほどに冷静だった。
「いいよ……別に」
いつもと雰囲気が違う。
「そーか……お前がそう言うなら……」
稚尋はあくまで稚尋を拒絶する澪に笑って言った。
その手は澪の腰のあたりにそっと添えられる。
「ひゃっ!?」
「お姫様らしく、だっこか?」
おっ、お姫様だっこ!?
澪は慌てて稚尋の手を振り払い、言った。