「っ……」
稚尋に問われ、その理由を澪は自分で考えてみる。
嫌いな所なら、言い足りないほど沢山ある。
「言ってみ」
そんなの、全部言えない。
「……全部」
澪が答えると、稚尋は興味深いと首を縦に振る。
「ふ~ん……」
そして今度は心底つまらなそうに相槌を打った稚尋。
何を思ったか、稚尋は強引に澪の唇を引き寄せた。
息が苦しい。
ヌルリと上唇を舐められ、思わずゾクリと背筋が震えた。
「んっ…………はぁ」
やっと唇が解放され、澪は大きくため息をついた。
そんな澪に、稚尋はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「これも……嫌い?」
「っ……!……嫌いよ!ばか!」
稚尋の態度が、澪は気に入らなかった。
私が……男の子を本気で突き放せないの、本当は知ってるくせに。
意地悪。
「……嫌い、ねぇ」
稚尋はわざとらしくため息をつく。
ジワリと、澪の瞳に涙が浮かぶ。
これ以上はもう、堪えられなかった。