「あぁ、あいつか……」
澪には、稚尋の態度が信じられなかった。
「……馬鹿じゃないの?」
「え?」
「こんなことして……何がしたいのよ」
稚尋の考えていることが分からない。
人を弄ぶ気持ちが理解できない。
澪は稚尋にそう言った。
澪の言葉に、稚尋はニヤリと笑って言った。
「何がしたいか、か?」
稚尋の指によって、澪の顎が稚尋の顔の近くまで近づけられる。
こうして心拍数が上がってしまうのは、仕方のないことだ。
ただ、同級生の男の子が近くにいる。思春期だから。それだけ。
……だけ、じゃない。
まともに恋愛をした経験がないから、だから好きになった人がいても、全部上手くいかなかった。
どこか、私は怯えていたんだ。
「姫……どうして俺を嫌うの?」
稚尋はどこか悩ましげに澪を見つめた。