「あ゛ぁ~ッ!!わかんない!」
「ゆっくりわかるようになるって!」
「うーん……」
「相談なら付き合うよ、ずっと♪」
本当に、瑛梨奈がいてくれてよかった。
澪は心からそう思っていた。
先ほどから思っていたことだが、クラスメイトの視線が痛い。
学校内では既に、澪が稚尋に見初められたと言う噂が広まっているらしい。
私は稚尋がどんな人なのかあまり知らない。
そこまで稚尋は有名人だったのだろうか。
人との関わりを極力避けてきた澪には、よく分からなかった。
学校内の女子の視線が痛かった。
ただ一人、暎梨奈を除いて。
「えりぃ……マジで好きっ」
本当に、いい友達だと思う。
「なっ、泣かないで!」
涙を滲ませる澪をなだめる瑛梨奈。
澪はポケットを探ってティッシュを探した。
その時。
何かが澪の手に触れた。
「あっ……」
稚尋の、ハンカチ。
澪は一度は掴んだそれを、またポケットの奥へと押し込んだ。
私は、自惚れて、矛盾してしまうかもしれない。
私は、本当に貴方を信じていいの?
“私が好き”なんだって。
玩具なんかじゃなくて、“私”を好きなんだって。