「だったら、あんな無理矢理なキス……する!?」
声が、自然と小さくなる。
やはり、事実とはいえ恥ずかしい。
しかし、瑛梨奈は変わらず笑顔で言った。
「澪に自分のこと、意識させたかったんじゃない?澪は?好きなの?」
私が、稚尋のことを?
そんなこと、考えたこともなかった……。
「好きなワケないでしょ!!むしろ、嫌いよ!」
「澪~顔赤いよぉ?」
瑛梨奈は澪を挑発するかのように言った。
「えぇっ!?」
そんなはずない。
私が稚尋を──?
絶対ない。
冷静に考えてみてもあり得ないだろう。
だって私は、“稚尋が嫌い”なんだから。
澪は小林大輔にフラれたばかりだ。
もっと落ち込んでもいいはず。
考えてみれば、色々とおかしい点がある。
澪は、フラれたことすらも忘れかけていた。
それどころか、悲しみも。
本当は、そこまでショックではなかったのだろうか。
コバミがあんなに簡単に、私を稚尋の女だって認めるなんて思ってもみなかった。
何の疑問も持たずに認めた所も、全てが上手くいき過ぎている。
もし、本当にそうだとしたら。
どうしてなんだろう──……?