「……稚尋」
流れる涙は、稚尋のワイシャツを濡らした。
…………温かい。
泣きじゃくる澪の小さな背中に腕を回し、稚尋は澪を抱きしめた。
ずっと、触れたかったんだ。
ちゃんと、こうして。
抱きしめたかった。
「…………っ」
「はぁ…………」
稚尋は安堵にも似た、ため息をもらした。
一筋の涙が、夕日に反射してキラキラと光っていた。それは、宝石のように。
「……稚尋」
「………………」
二人の視線が……ぴったりと合った。
「………………」
「…………稚尋?」
ゆっくり澪から視線を外しながら、稚尋は澪の涙を拭い取った。
しかし、それは再び溢れる。稚尋は小さなため息をついた。
本当、俺……ガキだな。
ただの、中三男子だ。
稚尋は小さな声で、澪の耳元で囁いた。
「姫……好きだよ?」