「……」
雛子に、こんな切ない笑顔をさせているのは紛れも無く俺だ。
あの時俺が気持ちをちゃんと押さえていれば、焦らなければ、こんな事にはならなかったのに
。
心の痛みは時間が癒してくれると言うけれど、それが事実なのか、本当はわからない。
いったいいつまで待てば、この痛みは癒えるのか、俺は、俺自身の手で味方を傷つけてしまったのだから。
稚尋は切ない笑顔を向ける雛子に返す言葉が見つからない。
稚尋はただ、その透き通る茶色の瞳を見つめた。そうするしかなかった。
「ねぇ……ちー」
「ん?」
「ちーは……本当に、昔、雛の事、好きだった……?」
その言葉は震えていた気がして、見つめた先に見えたのは、澪で見慣れていた雫。
それは雛子の頬を優しく濡らしていた。
「雛…………」
見慣れていたはずなのに、言葉に詰まって、何も返す言葉が見つからない。
「ねぇ、ちー……」
心の奥が、むず痒い。
なんなんだろう。この、やるせない気持ち。