「……そう、かもな」
雛子は、稚尋の瞳を見ようとはしなかった。
ただ、俯き、言葉を続けるだけ。
「…………ちーは澪ちゃんが好きなんだね?」
その声も、聞き取るのがやっとだった。
「あぁ」
それは嘘偽りなく、はっきり言える。
雛子は、窓の外に視線をうつした。
雛子の整った顔が、夕日のせいで、オレンジ色に染まった。
その空間に流れる、時間。不思議な気分だった。
「澪ちゃんとは……まだ一度しか、会って話した事がないの……今日で二度目。だけど……雛も思ったんだよ?前に町で澪ちゃんを見かけた事があったの」
その時甘い匂いが鼻を掠めた。ちーの、大好きな匂い。
雛子は外を見つめながら、続けた。
その言葉を、稚尋はただ聞いていた。
「澪ちゃん……初対面で友達になろうって言った雛に……いいよって言った。笑ってた……そんな澪ちゃん見てたら胸が苦しくて」
雛子が表情を変えることはない。
ただ、単調に言葉を口から紡ぐだけ。