「…………っ」
知らず知らず、澪の意思とは裏腹に頬を伝った温かい、雫。
…………どうして?
澪は慌ててその両腕で顔を覆った。
「姫……ごめん」
稚尋の顔から、笑顔が消えた。
違うの、悲しくなんかない。
謝って欲しい訳なんかじゃなくって……。
「……やだ、やだよぉ……っ」
ただ、あなたが愛しい。
だから。
───誰にも渡したくない───
そんな醜い独占欲が、澪の中に生まれた。
そんな自分が、嫌だった。
「何が……いや?」
稚尋はただじっと、澪の瞳を見つめていた。
優しい声が、また涙を誘う。
歯止めがきかなかった。
「私……汚い……」
「何が?」
「だって………………」
視線を上へ持っていくと、稚尋の瞳に捕まった。
全てを見透かされてしまうような、温かい瞳。
その瞳が、素直な言葉を誘った。
「……私、雛に嫉妬しちゃってる」
その言葉を聞いた稚尋は、また笑顔を向けた。