* * *
澪と雛子は、退場した後、二人でしばらく会話をした。
「そうだ!澪ちゃん!さっきの好きな人、雛も見たい」
雛子は笑顔で澪に言った。
「そっ、それは……」
雛子に、稚尋を見せる。
こんな可愛い子に会わせるの……?
あまり、気の進む話ではなかった。
「いいでしょ?お願い!澪ちゃん」
雛子はどうしても、と澪に頼み続ける。
「…………」
澪は言われるがまま、首を縦に振ってしまった。
その時だった。
澪たちが向かう前に、稚尋が向こうから来てしまった。
「……澪」
稚尋に見られてしまった。この美少女を。
ゆっくりと雛子の顔を覗き込み、澪は言葉を失った。
雛子が、今まで見たことがないような顔で笑っていたのだ。
それは、澪でもわかる変化だった。
そんな雛子を、稚尋は目を細めながら見つめていた。
澪の眉間に、シワがよる。
「……稚尋?」
どうしたの?
そう聞こうとした瞬間だった。
「ちー!」
「ひっ……雛!?」
目の前で起きている事が、上手く理解できない。
「会いたかったの!ちー!」
「ちょっ……離れろって!」
雛子が、稚尋に抱き着いていたのだ。